五式戦闘機


 五式戦闘機の開発で難しかったのは、液冷エンジンの搭載を前提に細く絞り込まれた三式戦闘機の機体に、太い空冷エンジンをフィットさせることだった。三式戦闘機の機体幅は84センチしかなく、直径121.8センチのハ112-Ⅱエンジンにカウリングを被せて搭載すると、機首の両脇に20センチ以上も段差ができてしまう。機体側面の段差は、空気抵抗を強める可能性があるため、川崎航空機はエンジンの排気管を段差に沿って縦に並べ、空気の流れをスムーズにする工夫を加えた。  また、エンジンを空冷式に換装したことで、液冷エンジンに付き物のラジエーターが必要なくなり、その分、300キロ以上も機体が軽くなった。さらに、機体の重量配分も良好になり、運動性だけでなく、着陸性能も向上し、技量の高くないパイロットでも安心して扱えるというメリットも生まれた。機体サイズは、全長8.8メートル、全幅12メートルで、三式戦闘機とほとんど変わらなかった。五式戦闘機は技術的に傑出した部分はなくても、バランスの取れた総合力の高い機体で、実戦部隊からは「陸軍戦闘機で最優秀」との評価も寄せられた。それが戦況が危機的に悪化した中、しかも偶然の産物としてしか得られなかったところに、日本の技術力の限界が見えたともいえる。写真は、英国のコスフォード空軍博物館に展示されている五式戦闘機一型の機首部分(落水浩樹撮影)(2012年04月06日)