零式艦上戦闘機三二型

福岡県の筑前町立大刀洗平和記念館に展示される零式艦上戦闘機三二型。三二型としては世界で唯一の現存機。マーシャル諸島で発見された機体を復元した。三二型の特長である角張った主翼端が目を引く【時事通信社】


 三二型は零式艦上戦闘機の最初の大規模改修タイプ。太平洋戦争開戦前の1941(昭和16)年初めに開発がスタートした。エンジンを離昇出力1130馬力の「栄」二一型に換装し、特に高高度性能の向上を目指したもので、主翼端を切り落とし速度とロール(横転)能力のアップを図った。また、プロペラを大型化し、カウリングも再設計して空力的洗練度を高める一方、機体構造を強化して急降下速度制限を緩和し、空戦性能の大幅な向上を狙った。


 初号機は同年7月に初飛行したが、速度は高度6000メートルで時速544キロと、二一型に比べ10キロ程度しか向上しなかった。また、換装した「栄」二一型エンジンは出力アップの反動で燃費が悪化したほか、エンジン部分が大型化した関係で胴体内燃料タンクの容量が減少、機体重量も増加したため、航続距離が二一型に比べ大幅に低下するという予想外のデメリットを生んだ。


 それでも海軍は42(昭和17)年4月から三二型の量産を命じ、戦闘の激化する南太平洋地域に送り込んだ。しかし、同年8月からソロモン航空戦が始まり、海軍航空部隊はラバウルから2000キロを往復してガダルカナル周辺で戦わなくてはならず、当然のことながら航続距離の短い三二型は現地部隊で敬遠された。同年秋には切り落とした主翼端を元に戻し、翼内燃料タンクを追加することで航続距離を向上させた二二型が開発され、三二型の生産はわずか半年、およそ340機で打ち切られた。